【断易用神の矛盾】

佐藤六龍著

《季刊「五術」平成15年3月号から抜粋》



五術そのものは理論とその構成がしっかりしており、ほとんど矛盾がないのですが、それを応用する側が使用する時に、変な使い方をするために矛盾が出てくるのです。周易などは、これを逆手にとって「易は変を尊ぶ、五行易などのように型にはまったのとはちがう」などという詭弁をろうするしまつです。

気をつけないと五行易も子平以上に矛盾が百出する占術です。こう書きますと五行易がさもあやふやな占術のように思われがちですが、そうではありません。前述しましたように、原則はまったく矛盾がなく、応用者側が勝手に矛盾を平気で作ってしまうからです。

そのよい例を今回は述べてみましょう。台湾の五術は、紫薇と五行易と風水が八割をしめています。

その書も本屋の棚のほとんどが五行易と紫薇と風水の三種です。そして、その五行易書のすべてが矛盾だらけ、卑俗な言葉でいえばインチキ・デタラメ判断の書なのです。

子平書では最近に先人の矛盾を説いた書が一種のみ出ましたが、五行易書は一冊(現在のところ)もありません。

五行易は周易とちがって、占事占的をものすごく細かくしぼって、それに対して用神という五行を設定し、それに対する他五行との生剋をみて吉凶成敗を占うものです。

ですから、ある五行を中心にみた場合と、他五行をみた場合とでは生剋がちがってくるのです。ここです矛盾というのは……。五行易の矛盾におちいる人は、この点がはっきり飲み込めていないのです。

悪口になりますが、台湾の五行易家はこうした矛盾がまったくわからない非常識家のみということになります。


次のは、台湾で数冊の五行易書を著している某氏の占例です。

〔占例……矛盾の五行易〕

五術を商売にしようとすることの可否を占う(占的)










この占的この易卦で二十二条の判断を下しているのです。

中国の古書『卜筮正宗』では一卦多占をいましめ、分占をすすめているのです。易者で食べられるか?の占的で二十二の断は多すぎます。こんな事はこの易卦を検討するまでもなくまちがい、という事はわかっています。五行易の矛盾という観点から一つ一
つ究明して五行易研究の参考に供しましょう。

小生の解説が多少、重箱のすみをほじくるアラ探しのような点があるかもしれませんが、そこが五行易の正当と矛盾のわかれ目、というふうに解していただくと幸いです。

「断」は台湾著の判断、「解」は六龍の解・註です。


1、世爻に朱雀を持ち、寅が卯の進神に化し、月から旺相。

 − 本人が五術を積極的にやろうとしている。
この業にむいている。

 − 誤りではありませんが、少し甘い断です。
五術開業の可否の占的で、むいている云云は用神外の断。積極的云云は推測。第一自己が積極的だからこそ、占断を乞うたのです。婚姻占などは相手がありますから相手の積極云云はあっても、自己占の場合に積極云云は少々おかしいのです。世爻が空亡の場合は迷っているという事が判断できますが……。

五術家にむいているか?というのと五術家開業の可否?とでは占的も用神もまったく違うのです。第一番目からおかしな断です。


2、卦中に財爻がない。

 − この業界そのものがあまりよくない。財利が地下にある象。非常に苦労があるだろう。

 − 誤断。占的用神とまったく無関係の事です。
五術家開業可否占で業界の内部まで判断するは論外。


3、月建亥と世爻寅が合し、日晨酉と化爻卯が冲する。

 − 本業をやめることもできず、しかもやめる事を考えている。

 − 誤断。五行易にこのような見方の原則はありません。月建と卦中支は旺相休囚と生剋と月破のみの関係であって、合をみる原則はありません。


4、世爻に子孫を持つ。

 − 小銭が入る。

 − 誤断。開業の可否占で子孫を小銭とするのは誤り。事業占・損得占なら妻財の原神で子孫を小銭としますが、希望占のような開業の吉凶占でこの断はまったくの誤り。

世爻用神の時に、六親が何がついても(忌殺帯身以外)吉凶なし、が正しい五行易です。


5、月建亥と世爻寅が合。

 − 亥は兄弟で散財、故に本業は散財で利なし。
しかし世爻寅は子孫ゆえ少し利がある、故にやめがたい。

 − 誤断。矛盾だらけ。

1では世爻が亥から旺相の吉とし、ここでは散財の凶とする矛盾。


6、卦身未が卦にない。

 − 無計画。

 − 誤断。卦身は一般にみないのが正しい五行易。
また無計画という象は、用神が空亡の時のみの象です。


7、世爻が応爻を剋す。

 − 改職にさまたげなし。自己の力がある。

 − 誤断。この占的には世応の関係はまったく関係ありません。応爻をみるのは彼我の関係のある占時のみ。また応爻を剋したから自己に力があるというのも誤断。自己の力の有無は世爻の旺相休囚と生剋のみ。


8、日晨酉が世爻寅を剋す。

 − 酉は父母。故に父母が反対している。

 − 誤断。自己の開業可否占で父母を両親とみるのは誤り。あくまでもたんなる酉金の剋とみるのが正しい断です。


9、午財が伏しており、世爻寅を洩らしている。

 − 妻女が暗黙のうちに反対している。

 − 誤断。2で妻財を業界内部の財運とみておき、ここでは妻女とみる兼断の矛盾。


10、子孫が世爻につき進神に化している。

 − 子女は賛成。

 − 誤断。自己の開業可否占で子孫を子女とみるのは誤り。しかも子孫を4で小銭とし、5で利益とし、ここで子女ととる兼断(三象意をみている)の矛盾。


11、月建亥の兄弟が世と生合。

 − 兄弟朋友は賛成。

 − 誤断。前述のように月建と卦中支の合をみるのは誤り。さらに自己の開業可否占で兄弟を兄弟朋友とみるのは誤り。しかも5で兄弟を散財として凶とし、ここでは兄弟朋友の賛成の吉とする吉凶の矛盾。


12、月建亥が世爻と生合。

 − 意思強く、五術の力量が満ち満ちている。

 − 誤断。3・5・11の項と、この断で四つの異
なった事象を一つの易理で兼断している矛盾。

3では亥寅の合で本業がやめられない。5では亥が兄弟で散財。11では亥の兄弟で兄弟朋友が賛成。12では亥寅の合で意思と力量が強い。同じ亥の兄弟爻でこれだけの矛盾の事象を述べているのです。


13、日晨酉が化出世爻卯を剋す。

 − 自己が無計画。

 − 誤断。6ですでに無計画を判断し、ここでまた同じ断を別な理から下している。まちがいではないが少々おかしい。しかも酉が卯を沖する兼断をすでに3で行なっています。


14、世爻に子孫を持ち、旺相で三爻の辰官鬼を剋す。

 − 自己に力があり、鑑定客を上手にあつかう。

 − 誤断。開業可否占にこうした判断はまったくの見当ちがい。しかも4で子孫を小銭云云と判じ、ここでは客あしらいと判じている。兼断の矛盾。


15、世爻に子孫を持ち子孫に化す。

 − 本業をすてられない。また別な業を持つ。
一つの身で両業を兼ねる。

 − 誤断。1・4・14とこの項で異なった事象を一つの易卦で兼断している矛盾。第一職業の数や種類は易卦に絶対に示されないのが正しい五行易。


16、六合卦に化す。

 − 業を変える事が吉。但し迷いが多い。

 − 誤断。このような象の断は、六合卦では絶対にでてきません。


17、壬申年に世爻寅を冲す。

 − 中国81年壬申に旧業をやめてしまう。

 − 誤断。開業可否占でこのような断は無関係で判断できません。


18、癸酉年に世爻化出卯を冲す。

 − 中国82年癸酉年は不運。

 − 誤断。17と全く同じ。堕官鬼が月建亥に囚。


19、官鬼が月建亥に囚。

 − お客が少ない。

 − 誤断。開業可否占で官鬼をお客とするは誤り。


20、官鬼が世爻を生じない。

 − お客が少ない。
 − 誤断。19と全く同じ。


21、寅午戌と三合火局す。

 − 自己の力によってお客より財を得る。

 − 誤断。これまでの判断とまったくの矛盾。
2では午の財がないといい、ここではない午に三合させている矛盾。


22、世爻旺相で進神に化す。

 − 父の反対をおそれず自己が説得する。

 − 誤断。これまでの判断と矛盾する断。
また日晨の酉からの剋を父の反対とみるのもおかしく、さらに旺相進神を自己が父を説得するという象も無理。



以上のように、一つの易卦で22の異なった事象を兼断しています。
しかもこの易卦は、五術を開業する事の可否いかん?を占う事に対しての立卦です。

それに対して22の事象を判断しているのです。開業可否に対する用神という事も、五類が互いに生剋しあうことも、まったく考えない、非常識無知な断易者なのです。

一つの易卦の中の妻財で、業界の財運、妻、求財の三種を平気でみています。子孫では自己の財、子供、自己の能力、職業の四種をみています。

用神があるのにこのように五類のすべてをみますと、子供はすべて小銭(財の原神)があり、お客を上手にあつかうという事になってしまいます。

妻は必ず財があり、その妻のつとめている業界は財運があって景気がよい、という事になってしまいます。

結論として、五行易の用神・用神の生剋、というきわめて初歩的な事を十分に理解しないため、こうした変な矛盾に満ちた五行易判断ができてしまったのです。

占術の原理原則には矛盾はなく、理路整然としているのです。それを使う側が変に応用するため、矛盾が出てくるのです。

皆さんはこの点をよくよく注意してください。