「傷官」考(命)


(会報誌・季刊「五術」平成6年2月号掲載文から抜粋) 


佐藤六龍著




新講義として『子平典故』と『子平芸海』をやるために毎晩、原文と辞書のひきくらべに苦労しています。
そして、今さらに中国は文字の国「文化発祥の地」という感を新たにしています。

中国辞書をひもとく苦しさはありますが同時に子平におけるその吉凶象意と文学性豊かな熟語の深遠な意味のピッタリとした合致性に感激してしまうのです。
このような事は、他の外国文学にはないと思うし、まして占術をこのように説いた物は中国以外に絶無でしょう。

特に、日本は中国と同じ漢字を用い、故事熟語にいたっては一部の例外を除いては中国と同じに解していますから、実に納得がいきます。今の若い人はなじみが薄いでしょうが、中年以上の人は『子平典故』に出てくる子平象意の言語は、日常使用している言葉ですから親しみがわきます。

しかし、それ以上にすばらしいと感心する点は、我々が、日常に用いているその熟語の意味を、子平推命の象意に実にぴったりと合わせている点です。

四柱推命術で、傷官星が喜神で強い命の人は、傷官の吉兆が出ます。傷官は、日干を洩らすよさですから、その人の長所、才能がうまく出るという象意で、ここから才能発揮、表現力豊か、芸術文学性のひらめき、行動能力の順当、などがいわれるのです。

これを、『子平典故』ではわずか四文字の「洛陽紙貴」(洛陽の紙貴し)で端的にあらわしています。
日本では一般に「洛陽の紙価を高める」としています。

この四字の由来は、中国の三国時代に中国一の醜男の左思という文人が「三都賦」という名文章を著し、人々がこぞってこれを筆写(当時印刷術はなかった)したため紙の値があがったことによるのです。

つまり、日本では、よい著作が出る、出版物が一世を風靡する、自己の著作なり芸が世に受け入れられる、というふうに使用しています。
傷官が喜神で強い、ここから才能発揮で名文章を著し、その筆写のため紙が高くなったというので、「洛陽紙貴」となるのです。

占術家にとって、傷官喜神が「洛陽紙貴」という表現が何ともうれしいではありませんか。


《附》
洛陽の都の紙が高くなるほどの名文章とはなにかというと、「三都賦」という著作で、三つの都の風物をたたえた名文章の「三都物語」です。

テレビでJRのコマーシャルに「三都物語」というのがあり、小生はJRもなかなかやるなあ。「三都賦」にひっかけ、京都奈良神戸の三都物語 ― とはと、感心したものです。

しかし、実は、全然そんなことは意識してなかったそうです。ワープロの一太郎というソフトも日露戦争の時の初代岸壁の母の、一太郎やい!!いたら鉄砲(銃)を上げてくれ!!というい母の言葉からとったものだと小生は思っていました。これまた思い過ごしでした。小生が学がありすぎるのか(?)じじいすぎるのか…。



話は変わりますが、日本の一般のインチキ四柱になりますと、この傷官を、字面だけからとらえています。

大阪の遁甲の講師をしていただいている山内久司先生(必殺シリーズを作った方)が、京都の四柱の先生から、「山内さん、あなたの生年に傷官があるから、先祖は首切り役人だよ」(時代劇の神様に向かってです)と言われたとのこと。

傷官から首切り、という発想、中国とくらべて、なんとお粗末なことでしょう。
もちろん、日本では喜忌を言いませんから、傷官の凶(わる)さをいったつもりなのでしょうが、それにしても首切りとは味のない言葉です。『子平典故』では、忌神の傷官が強ければ「三紙無驢」としています。

日干を洩らす凶兆が強いのですから、無駄なことをする、余計なことをする、意味がない、という象意です。

中国の南北朝時代に美辞麗句でつづる駢文体が流行しました。当時ロバは安物でしたが、学者がその安物のロバを買うのでも、その契約書を三通も駢文体で書き、それでいて、その三通の中に一時もロバの字がない、無駄な文章だった、という事に由来して、徒労、無駄なことをする、要領を得ない ― という忌傷官に「三紙無驢」としたものです。喜神に「紙貴し」、忌神にやはり紙を持ってきて無駄な契約書というのもにくいではありませんか。

同じ、忌神の食神、これも日干を洩らすのですから、やり過ぎ無駄ですが、『子平典故』では、「画蛇添足」とあり、蛇を書いた人が、時間が余ったため、つい蛇に足を書いてしまった、という故事にのっとり、忌神食神を説いています。



『子平芸海』は典故とちがい、人物の命式を説明するのに、その人の一代の吉凶の特徴と業績をわずか四文字で表現してあるのです。しかも、なぜにこの吉凶が出たか、を子平の干関係と喜忌で説いているのです。

孔子の一代の特徴を聖人と説かないで、「喪家之天狗」としてあるあたり、占術家としての目の鋭さがうかがわれます。

孔子は諸国を演説にまわっているときに、乞食と間違われたことがたびたびあります。それを、買い主を失った犬にたとえるあたり、すばらしいではありませんか。そして、その理由を「化金帯甲」云々としてあります。従旺的化金格なのに、甲木の忌財の病があるという意です。
『子平典故』といい、『子平芸海』といい、文化発生の国ではなくては、という感のする貴重な占術文献です。










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